かしのたかひと スペシャルコラム 人間万事塞翁が馬

2015年 冬号掲載

「終わりは、始まりのはじまり」

 国民の医療費は年々増え、40兆円に迫ろうとしています。国家予算の約4割を占め、人口一人当たり30万7500円かかっているようです。人口減少で医療費総額は減り、一人当たり医療費は増えるのでしょうが、個々人の生活視点でみると出来れば「ツライ治療」を受けずに、元気で健やかに暮らしたいとみんなが願っているはずです。そのためには「予防」がますます重要になってくるのではないでしょうか。そして私はその「予防」において「心」が影響する割合がとても大きいと思うのです。友人と楽しく話をする、やりたい事でスケジュールが埋まっている、目標に燃えているなど、「病は気から」つまり「健康も気から」だと思うのです。
 私が少年の頃、神戸発祥と言われる「健康優良児」の表彰制度がありました。皆勤賞で表彰を受けたいために、多少の風邪でも無理して学校に行きましたし、風邪をひかないように日頃から気をつけていたのを覚えています。「健康でいよう」「あの人みたいに私もやりがいを見つけよう」「日頃から準備し始めないと、かっこいいシニアにはなれない」そんな内的エンジンに刺激を与える雑誌が出来ないかなぁというのが実は「裕ちゃんを探せ!」を創刊した時の想いです。毎号たくさんの方から「元気をもらった」というお便りをいただき、この雑誌を作りながらエネルギーを与えていただきました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。5年間で350人以上の素敵な「裕ちゃん&ルリ子さん」に出会い、一番刺激を受けたのは私だったと思います。長い間、ご愛読いただき、ありがとうございました。しばらく休刊しますが、私が60歳になるまでに復刊する事を目指したいと思います(笑)。今の気持ちは尾崎紀世彦の「また逢う日まで」です!ありがとうございました。

樫野 孝人

2014年 秋号掲載

「シニアが働きやすい環境づくり」も成長戦略では?

 昨今、日本全国で叫ばれている「女性が働きやすい環境づくり」。生産年齢人口の減少を女性の就業率アップで補おうとする成長戦略のようです。実際、神戸市の有業率は男性が65.2%、女性が43.2%(いずれも平成24年調べ)で、男女間で22ポイントの差があります。
 ところで、本誌の主要読者である65歳以上の方々の有業率はどのようになっているかというと、65歳~69歳の男性が46%、女性が23.5%、70歳~74歳の男性が24.2%、女性が14.8%、75歳以上だと男性が9.2%、女性が3.2%です。65歳以上の方々は神戸市に35万4000人以上(市全体の約23%)、そして毎年増えていきます。
 家計収入が増えると子どもの数が増えるという統計もありますから、少子化対策上も「女性が働きやすい環境づくり」は重要だとは思いますが、子育てしながらの仕事は精神的・肉体的にも大変なことですし、保育所の整備などハード環境を整えるのにまだ時間もかかりそうです。
 そう考えると、子育てが終わり、仕事の知識、経験ともに有する「シニアが働きやすい環境づくり」を積極的に支援する方がより即効性があり、実効性も高いように思うのですが、いかがでしょうか?
 もちろん無理して働く必要はなく、「働きたいシニア」が「いつでも働ける環境と機会をつくる」ということだと思います。
 みなさんの取材をさせていただきながら、その元気に触れ、新しい都市の在り方をいつもそのように想像しています。

樫野 孝人

2014年 夏号掲載

「NPO20倍計画で神戸はもっと元気になる!」

 先日、NPOの方々とお話をする機会がありました。日本ではNPO(NonProfitOrganization)という名称がついたために、ボランティアの延長と捉えられるケースが多く、下手をするとコスト削減の手段のように考えている地方自治体が多いようです。
 そもそも企業とNPOの違いは収益を株主に還元するか、次の社会貢献に使うかという点であり、アメリカのNPOは民間企業のような給与を取っています。NPOセクター全体ではアメリカのGNPの7%、雇用の11%を占めるほどの存在のようです。個人寄付だけでも年間13兆円余、加えて10兆円超える資金が政府からの補助金で流れ込んでいるとのこと。
 私は、超高齢化社会を迎える日本の地域社会の在り方としてNPOセクターの充実は欠かせないと考えています。営利企業セクターと行政セクターを繋ぐ存在として、そして営利企業セクターを定年した方々の力の発揮場所であり、地域貢献の場であり、次世代育成の器にもなると思っています。
 現在の神戸のNPO全体の総収入は約100億円と聞きます。神戸全体のGDPは7兆円くらいですから、NPOのシェアは約0.14%。アメリカ並とは言いませんが、せめて今の20倍強のシェア約3%=2000億円くらいの仕事量をNPOセクターに担ってもらい、神戸の地域作りをしていくべきだと思います。そうすると、そこには60代・70代・80代の方々がやりがいを持って元気に働き、これまでの知恵と経験を活かした新しい神戸の姿が見えてきます。最近は女性が働く環境づくりが注目されていますが、実は日本を元気にする重要施策は「裕ちゃん&ルリ子さん」世代の方々の力をお借りし、地域再生することではないでしょうか。
 その時が来れば「裕ちゃんを探せ!」の頁数も倍増したいと思います。

樫野 孝人

2014年 春号掲載

「魔法の言葉」

 「街を歩いているカップルを見て"何をイチャイチャしてるのよ!"と昔は思っていたのですが、"最近は私もああいうふうにしたいなぁと素直に思います"」とある女性が語ってくれました。そのきっかけになったのはある人からの言葉。とても辛い時期を過ごした後、「あなたも大変だったわねー。」とギュっと抱きしめてくれたそうです。心に溜まっていたものが一気に溶けていったそうです。
 私も学生時代、「かしの君なら出来るよ」とかけられた言葉に本当に勇気をもらいました。また、親友からは7秒ルールというのを教えてもらいました。カチンと来た時に、すぐに言い返すと「売り言葉に買い言葉」で喧嘩が大きくなるので、一呼吸置いてから返事をすると冷静になれるとのこと。その一呼吸が7秒らしく、その間を取るために心の中で「な・べ・や・き・う・ど・ん」とつぶやくそうです。以降、かしの家は平和です(笑)。
 これまで何度も言葉の力で救われてきました。私もそうした言葉をかけられる人でありたいと思っています。

樫野 孝人

2014年 冬号掲載

「101歳までの道のり」

 最近、「長生き」をテーマにした講演が増えているように思います。実際、現代人の寿命は医療の発達もあり、確実に伸びています。男女差はあるものの平均寿命を80歳とした場合、不幸にして事故や病気で若くして亡くなる方も含めての平均寿命なので、今お元気な方は90歳までは生きるだろうとある先輩はおっしゃっていました。そして定年60歳は早すぎる、70歳定年で良いくらいだと。70歳まで働くかどうかは別としても、60歳以上の裕ちゃん世代になってから人生の幕を閉じるまでタップリ時間があるのは確かです。腰を据えて人生を楽しむことを考えるのは本当に大切なことだと感じています。
 私の父は癌のため59歳で他界しましたが、この話を聞いて私は101歳まで長生きしようと決意しました。親子で平均寿命が80歳になるようにしようと思ったのです。私は今年51歳、折り返し点に立ちました。2014年も諸先輩に教えていただきながら、後半戦50年を頑張って参ります。今年も「裕ちゃんを探せ!」をよろしくお願いします。

樫野 孝人

創刊編集長 樫野 孝人(東灘区在住・ 昭和38年生まれ)

板宿小、飛松中、長田高、神戸大卒。㈱リクルートで人事、雑誌編集長、福岡ドームで地域開発プロジェクトに参画。2000年㈱アイ・エム・ジェイの代表取締役社長に就任し、ジャスダック上場。国内最大手のweb構築企業に成長するとともに、「るろうに剣心」「のぼうの城」などの映画も製作。広島県庁では広報総括監として、「おしい!広島県」観光キャンペーンを仕掛けた。2013年神戸市長選挙に立候補。156214票獲得するも5675票差で惜敗。現在㈱CAP代表取締役社長。著書に「無所属新人」「地域再生7つの視点」「おしい!広島県の作り方~広島県庁の戦略的広報とは何か?~」など。